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2013 10 30

長生きしたいと思える自転車。

写真は、1970年代に作っていたビゴーレのミキスト。
ミキスト-mixte-とは、もともと男性向けであった自転車を男女共用のものとして女性でも跨ぎやすいようにハンドル部からサドル下までつながるトップチューブを細い二本のチューブにし、ハンドルから後輪まで一直線につないだフレームのものを指します。”Mixte”はフランス語で、英語の “mix” や “unisex” と同義。万人に自転車を楽しんでもらうべくヨーロッパで生まれたミキストですが、ビゴーレはさらに「走る自転車」としてオリジナルのミキストを早い段階から作っていました。

そして、彼女の愛車はそのビゴーレのミキストです。
80年頃にその自転車に乗り始めてから約30余年、サイクリングを日課としてほぼ毎日愛車に跨がり散歩に出かけます。ちゃんと手入れをし、調子が悪くなったら修理をし、たいせつに、たいせつに乗り続けてくれています。
今度もまたメンテナンスと修理のため姫路から京都本店まで自転車を持ってこられました。

 

オレンジ色のフレームにお気に入りのグリップとベルの付いたそのミキストは、今でも彼女の毎日に欠かせない一台。
今回、しばらく預からなくてはならない事を告げると彼女の顔は少々曇ります。
預かってもらっている間、大好きなサイクリングができないことをとても残念がっておられたのです。
そこで、彼女の息子さんが提案します。
「もう一台あれば修理に出している間も乗れるやん。」
その一言が、今回の自転車づくりの始まりでした。もちろん、「もう一台」はミキストです。
しばらく、ビゴーレのミキストは製作していませんでしたが、今回久しぶりに作ることとなりました。
図面となるイメージは片岡の頭の中。彼女の事を思い浮かべ、彼女にとって丁度良い一台となるように
材料を見繕い、加工し、そして自転車はできあがりました。(製作の顛末はまた後日。)

フレームの色は、彼女がお店で一目惚れした「あかり」の色。今度の一台はシックにまとめることになりました。

いよいよご対面の日。
作っている時から、うれしくて、うれしくて、寝られなかった彼女。
今日も姫路からの道のりではずっと新しい自転車で頭がいっぱいだったようです。

到着し、じぶんの新しい一台を見つけた彼女に、もはや言葉はいりません。

 

片岡の説明もほどほどに、なによりも乗りたい気持ちが勝って颯爽と駆けだしました。

その気持ちは勢い余ってどんどん走り出し、
あっ言う間にわたしたちの視界から姿を消してしまいました。

ようやく戻ってきた彼女の顔には満面の笑み。
1930年生まれ、御年80余歳。その快活な乗りっぷりに皆驚きを隠せませんでした。
そして、戻ってきて開口一番、
「なんで、こんなによう進むの?」
前のミキストよりもとても良く走るのです。
「同じように見えても、もちろん、進化しているんです。」
片岡は、自信満々にその問いに答えます。 
「そんなに違うの?」と彼女の息子さん。
彼もビゴーレオーナー、元々彼がビゴーレと彼女を引き合わせてくれました。 
その彼も母の一言に思わずそれに跨がり走り出します。

小柄な彼女に合わせたミキストは、彼にとっては少々小さめでしたが、
踏めばぐんぐんと進んでいくその自転車に、彼も思わず笑ってしまいました。
「これは、違うわ。」
そう、ビゴーレのミキストは、走ります。異型フレームだからといって操作性もダイレクト感も損なう事無く、
しっかり走るスポーツ車として他のビゴーレと同じエネルギーをかけて作りました。
今回は、より操りやすいようにとマウンテンバイクの操作性のノウハウをこのミキストに盛込みました。

見た目の大きな違いは無いので、本人達には何が違うのか不思議でならないようです。

その問いについて専門的な説明が片岡がしている間も、ずうっと笑みが止みません。
何かよく分からないけど、前よりも良く走る新しい相棒が、うれしくって、うれしくって仕方がないのだそうです。

常連のお客さんもいつまでも自転車をながめる親子と片岡が気になるとともに普段見慣れぬビゴーレに興味津々。 
「エンドは、カンパのロードエンドで‥」「26インチでも‥」「クランクは‥」常連さんの専門的な質問に片岡も饒舌に。

その間もしげしげと自転車を眺める二人。どうも、いくらながめても飽きないようです。

そのうち言葉をかわす事もやめ、
みんなでながめだしました。 
その間も彼女の顔には笑みが消えることはありませんでした。

いつまでもながめている訳にはいきません。
店内で引渡へ向けて最後の調整です。小物をつけ、各所を点検します。
今回のお気に入りの緑色のベルも取付けられました。

他のレース車やスポーツ車と同様、一カ所ずつ丁寧に点検します。
ちょっとした調整で乗り心地も変わるからです。すこしでも彼女の快適に乗ってもらう為に何度も何度もブレーキレバーの引き加減を確認する片岡。

最後に記念撮影。最後までみな笑顔です。


オーダーする事が決まってから出来上がるまで、ワクワクして眠れなかったという彼女。
すごく楽しみで早く見たかったという彼女の思いにしっかり応える自転車づくりができました。
帰り際に「今は、ねことサイクリングがたのしみ。これでまた長生きできる。」とわたしたちに言ってくれました。
長生きして少しでもこの自転車で一日でも多くサイクリングしたいとのこと。
彼女にとってかけがえの無い一台をつくれたことを光栄に思います。

これから毎日、彼女が新しいミキストでサイクリングに出かける様子が目に浮かびます。
ちなみにこの自転車では、買い物には行かないそうです。


彼女のサイクリング専用自転車、ビゴーレのミキスト。 現在は正規のラインナップではありませんので、一からの製作となりましたが以前つくった勘とこれまでのノウハウを基にその製作はとてもたのしいものでした。今回も一点のみの製作となったため試乗できるものがありませんが、このミキストにご興味が有ればビゴーレ京都本店までお問い合わせ下さい。

変わらないけど、新しい。
それがビゴーレの自転車です。

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