ちょうど、新幹線が走り出し、大阪で万博が開かれようとしている頃。
片岡少年はランドナーに跨がり、山道を果敢に攻めていました。まだ多くの道は、舗装されていない地道。こうした地道を楽しむ道具としてフランス発祥の旅行用スポーツ自転車であるランドナーは、少年達にとっては、高級すぎる遊び道具だったかもしれません。しかし、ビゴーレを営む片岡家に生まれ、自転車に囲まれて育った片岡少年にとって、単純に目の前にある自転車で遊びにいくのは至極あたりまえの事でした。こうしてランドナーに乗って走り回るうちに時代は変わり、道は舗装され、地道が無くなると共に自転車のたのしみは、より高速な走行を求めて舗装路での走行を想定してつくられたロードレーサーへと移行していきます。その中で、旅行用であり、アウトドア用であった自転車のランドナーは、舗装路での安定性を求めてスポルティーフというロードバイクに近いスタイルへ変化していきましたが、山行できる自転車のたのしみはランドナーが受け継ぎます。より険しい道に対応すべく、ランドナーの泥よけを取り、さらにはフラット・バー(まっすぐなハンドル)を取付けて操作しやすいように改造するものまで現れてきました。そしてそれは“パスハンター”と呼ばれるようになり、よりアウトドア色を強めていき、その先は、みなさんのご想像通りマウンテンバイクへと繋がっていきます。

ただ、それぞれが専門性を高めていき、当時のランドナーが持っていたたのしみ、どんなところも走れながら遠出もできる、少年達を冒険へ誘うような魅力的な 自転車が無くなった事に片岡は一抹の寂しさを感じていたようです。かといって、懐古的にランドナーを復活させるというのも違和感がありました。当時と今は明らかに環境も異なるし、ランドナー以降に新しいジャンルの自転車が生まれ、それをつくり、跨がる事で見つけ出した事がいっぱいあったからです。

こうして、懐かしいあの頃の純粋にランドナーという道具を駆って感じたたのしみを今この時代でもう一度感じれるようにと山と旅の自転車は生まれました。あの頃には無かったマウンテンバイクのノウハウを盛込みつつ、ロードバイクでもマウンテンバイクでもない、少年たちの冒険のために純粋につくられた自転車。この山旅車、手前味噌になりますが、現在世代性別を問わず多くの方にご好評いただいています。その中でも若かりし日にランドナーに跨がり、そこいら中を駆け回った往年のビゴーレオーナーたちが、ランドナーの次なるものとしてオーダーしていただいてます。

 

 

彼は、80年代初頭からvigoreのスポルティーフ、ロードバイク、トライアスロンバイク、マウンテンバイクと自転車のたのしみの節目毎にビゴーレを購入してくれている生粋のビゴーレオーナーですが、この春の定年を機に山旅車をオーダー。自転車に対する思いが強く、今回も細やかな仕様変更も盛込まれた山旅車のオーナーとなっていただきました。納品日にはその脚で貴船までならし走行、いたく感動してもらえました。その走りの感動が冷めやらぬ二日後に電車で名古屋まで輪行、そこから旧道の五十三次の道を東京を目指して壮快に走ってきたそうです。今回は小田原まで走られたようで、次は小田原出発で東京まで辿り着きたいとの事。未だ少年のように目を輝かせて山旅車での冒険話を聞かせてもらいました。

 

新しい山旅車は、これまで乗られていた自転車から部品を移行して制作。その際にフレームについていたヘッドバッチも移植したいとのことで取付けました。この山旅車は既に新しい冒険が始まっています。

 

 

この山旅車をオーダーした彼もビゴーレを20台以上所有する古からのオーナー。山旅車が試作段階で店先にあるときに真っ先に反応して、一番にオーダーしていただきました。こちらは本格的に旅出用としてキャリアとバッグ類を装着。普段から片道10Kmの道のりを自転車で通勤されていたようですが、これからはこれで毎日走るとの事。まさに毎日が小旅行です。季節が良くなってきたので、京都から日本海までこいつと走っておいしいものを食べて帰ってきたいそうです。わたしたちもうらやましい限りです。

 

 

彼は、これまで他社のクロスバイクで走っていたのですが、もっと気持ちよく走れる自転車を探してビゴーレに辿り着かれました。専門的な自転車はいらないけど、良い自転車がほしいという彼の願望は、たいした説明するまでもなく店内に入るや否や山旅車に引き寄せられて成就しました。毎日走れて、旅にも出られるこの自転車とのこれからがほんとたのしみのようです。

 

 

これをオーダーした彼、新しい自転車を探してインターネットを彷徨っていたところ、ビゴーレに出会ったそうです。それまではビゴーレの事を聞いた事が無かった彼もその直感にて京都本店まで辿り着きました。ロードバイクまではいらないけど、というリクエストに山旅車がはまったようです。毎日彼が働く山の家の料理店まで通う道のりは険しいので、急には乗りこなせないかもしれないけど徐々に通勤にも乗っていければと、オーナーになることでその意欲を燃やされていました。

 

うれしいことに新しく山旅車のオーナーになられた方の多くは、古参の人も新しい人もその姿に一目惚れ、そして乗って感動してくれています。そして、それぞれがオーナーの思いを反映した個性的な山旅車が仕上がっていて、とてもおもしろいです。

こんなのもそろそろできあがりそうです。あれ、鋼?のような山旅車。

 

毎日がたのしく、旅出が快い自転車。少年たち、若者達がランドナーに跨がって毎日繰り広げていた冒険物語が、ランドナーの正当進化ともいえる新しい自転車によってこの時代に復活しました。それぞれの思いを託された組み上がった山旅車が、みなさんのもとに旅立っています。

 

山と旅の自転車の完成車およびそのフレームについては京都本店、各特約店、ビゴーレ・ウェブ・ストアにて限定販売中です。