2024年3月ごろ、ビゴーレ京都本店の端で何やらミーティングが。
メンバーはフレームビルダー 片岡聖登、チーフメカニック 林聖一、そして私 フレームビルダー見習い 片岡有紀の3人。
↑カメラがあったので一同半笑いになってしまいました。本当はもう少し真剣な顔をしています。。。(多分)
“人にも、もちろん私たちが暮らす土地や環境にも適した「マウンテンバイク」をつくらないか”
“山と旅の自転車もあるけど、山を愉しむことに特化した専用設計車があってもいいかも”
“スピード重視で見た目も大きいMTB(マウンテンバイク)は増えてきたけど、山の中での時間をゆったり愉しむためのもの。私たちがもっと使いやすい、太いタイヤでは山道が荒れてしまうから、少し細めのタイヤで山道を荒らさないようなもの、みたいな。”
“1980年代のような、マウンテンバイク黎明期の時にあった、自然と対話するような、土地にあったものを現代だからこそ見直したい。”
そんな片岡聖登からの言葉とともに、新車種企画会議がスタートしました。
ビゴーレは、高性能な運搬車から始まり、戦後にはサイクリング車やロードバイクを製作、80年代後半からはマウンテンバイクが完成。その後、競技用のカーボン製ロードバイクや、日本初の前後サスペンションダウンヒルバイクなど、クロモリだけでなく、アルミ、カーボンといった新素材も導入しながら、日本初のものをお披露目したり、当時は新しかった競技文化を本気で愉しむための自転車を追い求めてきました(詳しくはHISTORYをご覧ください)。
2000年代に入ってからは、それまでの積み重ねを活かしながら日々を愉しむためのロードバイク(クロモリレーサーは2000年以前)マウンテンバイクの「Basic FR」(現在は販売終了)、そしてBasic FRを進化させたサイクリング車「山と旅の自転車プラス」、そしてレーサー感を愉しむための「70next」を制作してきました。
「クロモリ・レーサー」(KYOTO Collection あかり)
「Basic FR」
「山と旅の自転車プラス」
「70next」
次のビゴーレはどこに向かうのか、当初の発想の”マウンテンバイク”という切り口から、業務の合間を縫って毎週各自調べたことや考えたこと、試したことを持ち寄ってミーティングを重ねました。色々な規格、今世の中にある自転車のこと、私たちが暮らす土地で起こっていること、自転車の進化のこと。。。
私たちの開発は、全てこれまでの延長線上にあります。今回もまずは、今のもので仕様を変えて色々乗って試すことに。
「山と旅の自転車プラス」をマウンテンバイク仕様で組んで乗ってみたり、色々実験を始めました。
そんな時、偶然にも650Bでロードの細さのタイヤ(650b×25c)を発見。まずは試したい、ということで手に入れ一度「山と旅の自転車」に付けてツーリングに出かけてみました。(2024年年末には、新製品として650bの細いタイヤが出てきましたが、当初は珍しいものでした)
右:650b×25cのタイヤを付けた「山と旅の自転車プラス」
タイヤをつけて店舗のまえ前で早速3人で試乗を。
小さい人が試すと結構いいんじゃない?となったので、まずは私が出かけました。
60kmくらいのライドでしたが、これが結構面白い。
小回りも効きやすく、反応も良い。私、片岡有紀は身長も150cm弱なので、Sサイズのフレームに650Bを使うことで、見た目のシルエットもよりフィットした感覚もありました。
楽しかったのですが、ちょっとした荒れた道や地道は、細めのタイヤ(25c)では少し不安な要素が残る、という印象。
舗装路を高速で走る「クロモリ・レーサー」、
舗装路〜未舗装路を中速でゆったり愉しむ「山と旅の自転車」、
新たな愉しみ方として、その両方の要素を持った専用設計のバイクもいいんじゃないか?、そんなふうに考えました。
その経験を踏まえて、3人で話を重ねるたびに、色々な意見や思いが行き交いたどり着いたところ、
それが、上記のような乗り方ができる”オールロード”でした。ゆったり走ったり、少しあれた道でも走れるロードベースので少し太めのタイヤ(30c〜35cくらい?)まで入る、専用設計のバイクです。
性能はもちろん、見た目もクロモリの素材を活かしたビゴーレらしいシルエットで機能的で美しいもの。
走る性能と見た目の美しさに緊張感があるもの。
「まずは自分たちが愉しむ道具づくりから」
その想いをもとに、試作第1号は、ちょっと尖った「小さい人でも愉しめるオールロードをつくろう」ということになりました。
小さい人?なぜ?と思われるかもしれませんが、単純に”私が乗るから”です。(笑)
片岡聖登は158cm、林は167cm、そして私は150cm。
1番小さい私が乗れる機能もよく、見た目も美しいものをつくる。
乗った時のシルエットもより美しいものをつくる。形になれば、大きい人も乗れる700cの設計にもして行こう、そんな話になりました。
新しいマウンテンバイクの開発は少し先になりました笑。でも辞めた訳ではありません。実はこっそりと開発を進めています。こちらの情報公開は気長にお待ちくださいね!!
まずは、「自分たちが使いたいもの、乗りたいものをつくる」。市場調査から入るという訳でもなく、現代ではあまりないような開発の始まり方ですが、この考え方はビゴーレがスタートした時から受け継がれている発想。
ビゴーレが始まったのも、自分たちがこの土地で愉しみ尽くせる自転車を作りたかったから(⇨詳しくはこちら)。 その想いや考え方は今でも変わりません。私たちが本気でいい、自分たちも使いたいと想いを形にすること、それが”ビゴーレイズム”の1つでもあります。これまでのモデルもそうやって開発し、製作・販売してきました。
ということで、長くなりましたが、このSTORIESにて、まず私たちが愉しむための「オールロード開発記」を連載して行きます。
このオールロード、今でも現在進行形で進んでいる開発です。つまり、どこに着地するかも、何話で終わるかはわかりません。どんな進行状況になるかも分かりません。今は、開発が始まった”当時”のことをお話ししていますが、第3話くらいからは現在進行形の状況をお伝えすることになりそうです。
とても”ビゴーレ的”な開発です。これまで積み重ねた歴史(技術・技能はもちろん想いのところも)の次を考えながら手を動かして、試行錯誤をする。いったん形になれば自分たちで試し、店舗に訪れたビゴーレオーナーさんにも試してもらったり色々聞いたりしながら、また改良を加えてく。そんな新たなビゴーレの1台が生まれる過程をぜひ一緒に見ていただければ嬉しいです。
京都本店の工房”VIGORE BICYCLE LAB”
京都本店に来ていただければ、これから紹介していく”ものづくり”の過程を実際に見ていただくこともできますので、来られた時はお気軽にお声がけくださいね!