こんにちは、四代目 フレームビルダー(見習い)の片岡有紀です。「オールロード開発物語」、今回で第5話です。設計、フォーク制作、治具作成と進み次は実際のフレーム製作へ。
フレームの製作はざっくり言うと、設計>(必要があれば、治具製作)>パイプカット>ラグの整え>仮付>溶接>仕上げ、と言う順で行います。
まずはパイプカット。図面の角度通りに切っていきます。前回に紹介できなかった治具も合わせて紹介させていただきます(勝手に見てほしいだけです)
パイプカットする時は、このようなブロック状のパイプ固定治具を付属。フライス盤でパイプの両端を切る時に使います。
片側を切って、方向を変えて反対側を切る時に、パイプの中心を維持しながら、カットすることができます。
これは、よりパイプカットの精度を出すために以前自作した治具(市販品ではありませんでした)。簡単な治具ですが、パイプがしっかり固定できる構造などを検討し、製作するまでに時間がかかりました。パイプの径に合わせて数種類あります。
▲パイプを挟んでいる四角のブロックが治具の部分。使って1本のパイプを固定します。
▲パイプを挟んでいる四角のブロックが治具の部分。精度を出すために3つ使って1本のパイプを固定します。
チェーンステー、BB部分のカット。フライス盤(DECKEL FP1)に、チェーンステーやシートステーを固定するための治具(Cobra製)を付属できるプレートを製作しました。こちらも、市販品が存在していないため自作をしました。
▲プレート製作時のスケッチ
▲DECKEL FP1に、自作のプレートを使ってCobra治具を組みつけた様子。組みつけた時の見た目も重視して、アルマイトで黒くしました。Cobra治具と一体になっています。
▲チェーンステーや、シートステーを固定した状態で、図面通りの角度でカットできます
図面に合わせて治具上でパイプの位置、刃の位置をセットすれば、精度よく一気にカットできます。
パイプのカットが完了したらパイプ同士やパイプとラグを、仮付>本付の順に溶接。溶接方法は場所によって”ろう付け”と母材同士をとかしてくっつける”Tig溶接”の2つを行いました。強度や、設計構造に合わせて、溶接方法を変えています。
▲UDH対応のエンドをTig溶接しているシーン
▲ヘッドラグ部分をろう付けしているところ。ダウンチューブとヘッドチューブを繋げます。
溶接が完了した後は、仕上げ(フラックスを落としたり、細部の磨きなど)をして1つのフレームが完成。最後は、治具に載せて図面通りの精度が出ているかを確認します。
一旦試乗のため、生地フレームのまま、105(オイルディスクブレーキ)で組み上げました。0号機の完成です。何かあった時に修正したり(ダボ追加など)、何より早く”試す”ために生地で組みました。
このように、試乗車は生地で組むこともありますが、製品としては生地や生地の上にクリアだけでのお渡しはしていません。工業製品の一つとして、塗装は見た目のこともありますが、錆や腐食防止の役割も果たしているためです。その点については、ご理解いただけると幸いです。
1-2話でも書きましたが、これは私(身長150cm)が乗るバイク。私が実際乗ってこれくらいサドルが上がります。
身長に合わせ、ホイール径の小さい650Bホイールの専用設計なので、ホリゾンタル(地面とトップチューブが並行)の設計を実現しました。性能はもちろん、見た目も美しい1台です。
今回は650Bですが、設計が完成したら700c版の大きいサイズも製作していく予定です。
図面通りにできましたが、その性能を確かめるためにまずは自分たちで試すことが重要。
私たちが愉しいと本当に思えるものを製品化していきます。
▲実際に乗って試しているところ
ちょうど、完成した時にいらしてくださった昔からの常連さまも、興味津々に試乗を(時間が無く完成を焦っていた頃、最後の組み立てもお手伝いしてくださいました)。こんな時にいただける1言はより良い製品の開発に繋がります。
試乗をしてみて、3代目 フレームビルダー片岡聖登は「若干修正をしたいけど、大体思っていた通り」「1990年代の650Cサイズのトライアスロンバイクの経験で大体予想がついていた」とのこと。
私も乗ってみました。店舗から出発して試走に出かけました。「もっと踏みたい」と思える一台。ここの角度若干変えたらどうかな?という点があったのですが、そこは3代目と同意見でした。
今回試作したものをベースに、再度細かい設計を修正して本番の1台を製作していきます。
4月以降には完成形の試乗車を用意したいと思っています。もうしばらくお待ちくださいね。
(700c については、その後試乗車が出来上がっていく予定です!)
次は、まさに今、必死に製作を進めている、改良したものの話ができればと思っています!
2月23日(日)に毎日放送MBS「京都知新」にて放送いただいた、
#443「”ビゴーレ” フレームビルダー・片岡聖登/有紀」 でも、0号機をご紹介いただいております。
現在、TVer配信いただいておりますので、ぜひご覧ください。
【概要】
▼番組:MBS毎日放送 「京都知新」
“「京都知新」は、1200年に渡り受け継がれてきた京都文化の「動」=「新」の部分に光を当て、
「京都を温(たず)ねて新しきを知る」番組です。”
▼こちらから視聴いただけます(3ヶ月無料配信)