先日ご購入いただいたオーナーさまからのメンテナンス方法の問い合わせメールとともに届いた一文、
「ビゴーレのフレームのヘッドチューブにあるロゴ(魚の骨のようなロゴ)は何をイメージしているのでしょうか?(VIGORE WORLDの記事で解説頂いても面白いかも。)」
↑これがそのロゴ
…確かにどこにも説明がなかった、と改めて気づかせていただいた一言。
せっかくですので、VIGORE WORLDにてちょっとしたロゴのストーリーをご紹介させていただきます。
時は1980年代後半まで遡ります。
それまでの1960-70年代のラグ溶接のフレームのヘッドチューブにビゴーレはアルミリベットで留めるタイプのヘッドバッヂをつけていました。その頃の日本のスポーツ自転車の主流はランドナーから始まり、道が舗装されたこともありロードバイクが主流の時代でした。
▲1970年代のランドナーに付属していたヘッドバッヂ(最近、リメイクさせていただいた1台の写真)
▲現在、製作・販売している70nextもラグ溶接のため、このヘッドバッヂをリニューアルしたものを付属しています。詳しくはこちらより。(70nextの専用品です/枚数限定で赤色も製作しました)
1980年代後半に入ってからは、”マウンテンバイク”らしきものが出現たり、”トライアスロン”という競技がでてきたりしたため、その黎明の最先端を見ようと、1982年から活動を始めていた3代目フレームビルダーの片岡聖登は本場のアメリカに視察や自転車の持ち込みを開始しました。(詳しくはHISTORYにて)
▲1988年 アメリカ カリフォルニア州ロングビーチで開催された展示会へ出店した時
▲1990年アメリカのコロラド州デュランゴで開催された第1回マウンテンバイク世界選手権で開発中のモデルをテストライドした時の様子
その時アメリカで感じたこと、それは「自転車や建築物など、様々なものが、それぞれがその土地で培った感性で自由に表現をしていた」ということ、
そして「それぞれのロケーションに合わせて”もの”がデザインされている」ということでした。
カリフォルには、カリフォルニアの空気感があり、
色も、デザインも、何もかも”カリフォルニア”している、そんなイメージです。
(京都の空気感を見つめながら京都でものづくりする私たちが自然に表現した、KYOTO Collectionの開発にもつながります)
この渡米の経験からこれまでのラグ溶接だけでなく、マウンテンバイクの製作やトライアスロン車のロードバイク製作にむけて設計の自由度が高いTig溶接も取り入れるべく活動をしていましたが、車種の開発とともに、全体の見た目を考えた際ヘッドバッヂのデザインとTig溶接のバランスに違和感を感じていた片岡。
▲伝統的なラグ付き溶接
▲Tig溶接
Tig溶接のアルミ製ロードバイクでトライアスロン競技(アイアンマン・レース)にも出たりしながら、車種の開発をしながら、新たなデザインを考えるべく、1989年くらいからその頃開発していたフレーム(Tig溶接)のシルエット似合うロゴ原案のスケッチを描き始めていました。
ちなみに、トライアスロン競技に出ていた理由は、お店に来てくださる方が、トライアスロンを目指されていることも多く、まずは自分もやってみないとものづくりできない、と思い競技に参加していたとのこと。(実はカナヅチだったけど、なんとか泳げるようになって出場したそう笑)
▲1992年の鳥取県皆生でのトライアスロンでの写真(写真に写っているのは片岡製登)原案で形になりつつあったロゴがサイクルジャージの左袖にプリントされています。
このように、この頃はマウンテンバイクで自由な発想に着想を得ながら山をかけめぐったり、トライアスロンに取り組み海を走ったり、自然の近くを走るというロケーションでデザインを考えました。
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スイムで海から魚が上がってきて自転車に乗るようなイメージ、(トライアスロンはスイム>バイク>ランの順で走ります)
そしてフレームビルダーとして自転車は骨組み(フレーム)が大切ということを考えでフィッシュボーンのデザインが完成しました。”食べられた魚”ではありません、自然のもで自転車の骨組みを表現したものだったのです。
今のロゴは当時手書きでデザインしたものをトレースしたもの。
魚の骨に、御光が差しているイメージです。
そんな背景で出来上がったのが「フィッシュボーン」のロゴでした。
今でもTig溶接の自転車には「フィッシュボーン」のロゴが、伝統的なラグ溶接には「ヘッドバッヂ」を付属しています。
どっちのデザインの方がいい、ということではなく全体のデザインを表現するために使い分けをしているのです。
このフィッシュボーンとダウンチューブのVIGOREのロゴは、相棒の1台との永い付き合いの中で、気分に応じてカラーも変えられるよう、塗装後にこちらの店舗で1個1個貼っています。
聞いてはいないけど、何のロゴなのかちょっと謎だったという方は、謎が解けたでしょうか。
これからオーナーになる方も、これまでのビゴーレのオーナーの方も、このロゴを見るたびに、このちょっとしたストーリーを思い出してもらえると嬉しいです。